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今そこにある危機(276) [国際・政治情勢]

「【東亜春秋】台北支局長・山本勲 中国軍には「弱者の戦略」で

2010.5.20 03:06 産経新聞

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沖縄本島の南方海域で海上自衛隊の護衛艦「あさゆき」に接近した中国海軍のヘリコプター=21日午後(防衛省提供)

 20年あまりにわたる中国急軍拡の衝撃が鮮明になってきた。海軍を中心とした装備の拡充・近代化ぶりは米国を脅(おびや)かし始め、日本も東シナ海の領土・領海をめぐる係争で守勢に立たされつつある。日本は中国がこれまで米国に対してとってきた「弱者の戦略」に学び、軍事・安全保障戦略を再構築すべき時ではないだろうか。

 先月から今月上旬にかけて相次いだ海上事件は、日中両国の力関係の変化を象徴していた。

 4月中旬、中国の海軍艦隊が沖縄本島と宮古島の間を東シナ海から太平洋に抜け、沖ノ鳥島周辺などで大規模な遠洋訓練を行った。その過程で2度にわたり中国軍ヘリコプターが監視中の海上自衛隊護衛艦に異常接近した。

 今月3日には、中国の海洋調査船が日本の排他的経済水域内で海上保安庁の測量船を追跡し、日本側が避難するという前代未聞の事件が起きた。中国はいずれの行為も正当化しているから、事件の再発が予想される。

 中国は軍事力強化に自信を深め、トウ小平の遺言だった「目立たず力を蓄える」低姿勢外交をかなぐり捨てたようだ。今年の国防予算は約5320億元(約780億ドル)だが、米国防総省は実態はその1・4~2倍と見積もっている。すでに日本(約500億ドル)の2~3倍の規模だ。

 同省によると「3分の1以上が海軍向けで、75隻の主要な軍艦と60隻以上の潜水艦など260隻の船舶を保有」し、「2年後配備をめざし複数の空母を建造中」(ウィラード米太平洋軍司令官)だ。

 台湾を射程に収めたミサイルを1400基配備するほか、日本の大半を射程とするミサイル「東風21」部隊を山東省に配置している(カナダの軍事専門誌「漢和評論」)。防衛費を減らし続ける日本は装備では太刀打ちできない。

 中国にも最貧国の時代があった。だが毛沢東は1950年代に核開発を始め、米ソの核威嚇を抑止した。トウ小平は経済発展最優先で西側に接近し、江沢民時代の90年代から軍拡を本格化させた。

 96年春の台湾海峡危機では台湾をミサイル威嚇したが、空母2隻を派遣した米軍になすすべもなく抑え込まれた。

 そこで中国軍がとったのが強大な相手への「弱者の戦略」だ。一気に米軍のような空母戦闘群を形成する技術も資金もない。だからまずロシアから高性能の潜水艦や駆逐艦、戦闘機を購入(後にそれらをサンプルに自主開発)し、自前のミサイルと組み合わせて米空母が台湾近海に容易に近づけない体制の構築を急いだ。

 ゲーツ米国防長官は今月初め、「(中国の)高性能潜水艦や長距離対艦ミサイルが西太平洋での米国の行動の自由を終わらせようとしている」と述べている。中国の戦略は相当の成果をあげている。それだけに、日米安保体制下、専守防衛一辺倒できた日本も中国軍を抑止する防衛戦略が必要だ。

 台湾の馬英九政権は、いったん中止した射程1千キロ以上の中距離弾道ミサイルや巡航ミサイルの開発を再開した。空母を攻撃する高速ミサイル艦の開発も進めている。中国の軍事基地や軍艦への攻撃能力を高め、相手の攻撃を抑止する狙いだ。

 親中ぶりを批判されている馬政権でさえ、中国への備えを強めている。隣国や海上からのミサイル攻撃をミサイル防衛システムだけで防ぐのは不可能だ。専守防衛の枠内でも、できることはいろいろあるはずだ。」



日米同盟が普天間基地問題でぎくしゃくする中で、米国が鳩山政権の未熟な安全保障観にどれほど忍耐し、寛容な対応に出ているかを日本はもっと深刻に受け止め、米国に対する『甘えの構造』をやめるべきです。
米国の忍耐が切れたら、海兵隊の撤退もあり得ます。そうなってからでは遅く、日本の国家の安全は直ちに危うくなります。それが理解できないのは、米国の抑止力を理解できていないのと同義です。
北東アジアはこのところ、潜在的な危険性が高くなっています。3月末に黄海上で起きた韓国海軍哨戒艦『天安』の沈没事故が魚雷の爆発によるもので、北朝鮮がこれに関与していたということになると、今後、南北間でいかなる事態が発生するか予断を許しません。
昨年11月に同じ黄海上で起きた南北警備艇の銃撃戦により北朝鮮側に死傷者が出ましたが、今回の事故がその報復であるとすれば、容易ならぬことです。北朝鮮は今年1月15日、韓国に対し、『報復の聖戦』を始めると宣言していることもあり、これとの関連が危惧されます。このような状況下で、日米同盟が不健全な状態であることは、さらに、われわれにとって危険性が高いと知るべきです。
日本にとって、もっと切迫した問題は、日本周辺海域における中国海軍の活発な進出活動です。特に、4月に中国艦艇10隻が沖縄本島-宮古島の間を通り抜けて沖ノ鳥島西方海域で活動した事例や、東シナ海で警戒監視中の海自護衛艦に対する中国軍ヘリの接近飛行、5月の奄美大島沖での海上保安庁測量船に対する中国船舶からの作業中止要求など、周辺海域における海軍活動は意図的であり、挑発的です。
中国海軍の近代化と外洋活動は特に、昨年初頭以降、顕著ですが、今回の活動は、日米同盟がぎくしゃくしている状況を見て、『友愛』を唱える鳩山政権には何もできないと見通し、日米同盟の離反を狙った活動と見るべきです。中国の見通しどおり、これに対する日本政府の対応も生ぬるく、断固としたものを感じないのは極めて遺憾です。
日本は、こうした北東アジアの戦略環境の中で、米国の抑止力を確保しておくことが死活的に重要であり、普天間基地問題で、つまずいている余裕は全くありません。
しかしながら、日本は米国の抑止にのみ依存するのではなく、自らの防衛努力を戦略環境に応じて適切に進めることが不可欠です。そのための南西防衛戦略を早急に確立せねばなりません。
日本列島は、北東から南西に延びる3500キロという長大な列島群でできています。そのうち、九州南端から台湾までの1300キロ余は本州の長さに匹敵し、沖縄本島から与那国島までの600キロは東京-広島間の距離です。この間に、陸上自衛隊の部隊はなく、防衛上の空白状態ができています。
そもそも、九州南端から与那国島までに、190の有人島がありますが、そのうち自衛隊が配置されているのは5島のみであり、日本の最西端の部隊は宮古島にある空自レーダーサイトです。沖縄本島と宮古島の距離は268キロあり、この両島の間にある海峡の中間にはレーダーでも監視できない110キロの空白海域が存在します。中国海軍は、この間を通過していました。
わが国はこうした南西諸島地域に防衛上の空白が存在することを放置すべきではなく、まず、南西海域における日本防衛のための基本戦略を速やかに構築すべきです。冷戦後に日本の南西方面が戦略的に見て重要な正面であることは明白であるにもかかわらず、防衛上の重点がまだ、冷戦期の遺産を引きずっているとすれば、それは早急に是正すべきです。
そのうえで、尖閣諸島からも近い距離にある与那国島、宮古島、石垣島など先島諸島や奄美大島など主要な有人島に陸自部隊を配備するとともに、周辺海域の情報収集や、海上交通路の防衛のために、海空自衛隊の警戒監視部隊や通信部隊を配備し、また、有人島の民間空港も自衛隊と共同使用できるようにすべきです。
中国の外洋進出は、明確な意図を持って進めている国家戦略です。これに対して、中国に外交上の抗議を繰り返すだけで、日本の国益を守れるとは思えません。
日米同盟を一層緊密にすることは重要でありますが、同時に、日本として南西方面に取り組む戦略思考がなければなりません。沖縄の負担は軽減すべきですが、沖縄本島を含め南西方面の多くの島民が安全に暮らせるようにすることは日本国の責務です。南西方面の防衛にはコストもかかるし、リスクもあります。しかし、これは日本防衛の重要拠点であるという認識にたって重点的に努力すべきであり、そのための陸自の要員が不足するというのであれば、増員すべきでしょう。

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