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今そこにある危機(104) [国際・政治情勢]

「【正論】米バンダービルト大学日米研究協力センター ジェームス・アワー

2009.10.20 02:48 産経新聞



 ■日米関係への鳩山政権の誤解

 ≪「日本らしい」対応の結果≫

 日米双方に新政権が発足して、両国関係の行方が注目されている。鳩山由紀夫首相は「日本が米国とより対等な関係になる」ことを主張する。しかし過去45年間私の記憶の限りでは、米国は一貫して「(日本に)もっと積極的に発言する」よう求めてきた。従って鳩山氏が意味する「対等」の概念がいまひとつピンとこない。

 私は日米関係についての誤解が存在していると思っている。念頭にある4点を論じてみたい。今回の「政権交代」に期待する人たちは心に留めておいてほしい。

 誤解(1)。それは、日本は1945年から今日まで、米国に対して従属的立場にあった、というものである。確かにその間、米国は軍事的に日本より数段、強力であった。だが、日本は、米国と運命をともにすることを要求されているわけではなかった。米国による日本占領が終わり、米国との同盟を結んだ日本は、自らその道を選んだ。それは日本自らの選択の問題だったのである。

 事実、日本の経済が復興し、その競争力が増した1970年までに、多くの米国の議員が、日米同盟は米国にとって不平等であると不服を唱え始めた。日本は米国から離れることも可能だった。それをしなかったのは、米国が命令したからではなく、自国の判断によって、非常に割の良いとても「日本らしい」決断をしたのだ。

 ≪米国にとってこそ不平等≫

 誤解(2)。ここでは「日米関係は、日本のアジア諸国との関係深化の妨げとなる」という。しかし、これもよく考えてほしい。

 冷戦終了までの20年間、日本は、太平洋艦隊だけでも100隻以上の潜水艦を有した旧ソ連による危険な軍事的威嚇に直面していた。確かに、冷戦は終息して旧ソ連の脅威はなくなったが今日でも日本は、予測不可能な北朝鮮の独裁政権による脅威を受けている。今後の中国の行方についても相当な懸念がある。

 日本はかつて植民地であった朝鮮や中国に繰り返し謝罪し、うまくやっていくために多大な努力を払ってきた。だが、こうした日本の努力は報いられておらず、特に中国の一部では、いまだに平気で偏見に満ちた反日教育を行い、日本がまだ十分に謝罪していないという批判をやめていない。しかもそれを、国内の腐敗への批判をそらすために利用している。

 仮に、日本が自国の安全保障を米国に依存せず、国防への独自の取り組みを強めるとしたらどうだろう。日本の安保防衛政策に対するアジア諸国による批判は、ますます大きくなるだろう。日本の米国離れがアジア諸国に好意的に受け入れられると考えるのは、あまりに認識が甘い。

 誤解(3)は、日本と米国がもっと対等な関係ならば日本の負担は軽減されるだろう、というものである。しかし、これも違う。

 よくある説明では、いくつかの在日米軍基地では見逃せない公害が発生している、あるいは、駐留米兵の犯罪者は、正式に起訴されるまで日本の警察に引き渡されないといったことが、不平等の証であるという。私に言わせれば、こうした問題は特に日米同盟の履行に見られる不平等と比べると、些細(ささい)な事柄である。

 米国は日米同盟によって、日本の周囲の核保有国を睨(にら)み、日本への軍事攻撃や、インド洋、南西太平洋上でのシーレーン途絶などがないよう安保策を提供している。米国は、中国を重要視して、民主的で自由市場経済の強豪日本を無視することはしたくない。そこでいう「日本無用論」は誤りだ。もしも日本が、米国と一層対等になるための努力をほとんど、あるいは、全くしないなら、米国は日本の「もっと先」を見るだけだ。

 日本は2001年後半以来、インド洋で給油活動をしてきた。これはそれほど危険な活動ではないが、米国は日本の活動を有り難く思っている。少なくとも日本は「何か」を行っていた。しかし鳩山政権は、代替案も示さずにこの任務に終止符を打ちたいと言う。

 ≪問題は役割と任務の遂行≫

 誤解(4)は、同盟関連の支援を縮小すれば、日本の安全保障を損ねることなくコストを削減できる、というもの。確かに、同盟の米国にとっての重要度は冷戦時ほどではない。日本が在日米軍の移転を要求するとしたら、米国は不本意ながらも承諾するだろう。だがその場合でも、北朝鮮や中国が自国の軍事能力を縮小するとは思えない。日本は安全な地域にあるわけでもないのに、その軍事費は国民総生産(GNP)の1%程度に留まる。日本が平和で繁栄を享受できるのは、米国との安全保障体制があるからだ。

 以上4つの誤解を解いたうえで、言えることは、現在の日本がさらに応分の役割と任務を果たせば、米国とより対等の関係を持つことが可能になるということ。そして、繰り返すが、それをするもしないも日本側の自由ということだ。これまでも日本政府が自由意思でそうしてきたように、鳩山政権も何が日本の国益なのかを賢明に考慮されることを望む。」

「【主張】米国防長官来日 同盟の課題に決断を急げ

2009.10.20 02:48 産経新聞

 米国のゲーツ国防長官が20日に来日し、21日まで鳩山由紀夫首相ら日本政府首脳と協議する。

 焦点は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題とみられるが、鳩山政権は海上自衛隊のインド洋補給支援の代替貢献策や「核の傘」など日米同盟の基本にかかわる問題も多く抱えている。同盟関係を危うくすることがないように、鳩山首相は普天間問題などの諸懸案の解決に向けた現実的判断を下していくべきだ。

 長官来日に先駆けて米国防総省高官は、移設先(同県名護市)の代替滑走路の沖合移動を容認する意向を表明した。先週、仲井真弘多県知事がこれを条件に現行計画に沿った県内移設を認める意見を示したことに応え「微修正なら妥協は可能」という歩み寄りのカードを切ったとみていい。

 地元と米側の歩調がそろい始めたにもかかわらず、鳩山首相らが「県民の総意を探る必要がある」と来年半ばまで決断を先送りする姿勢をみせているのは問題だ。政権公約などで普天間の「県外移設」を掲げてきたのに加え、来年は1月に名護市長選、11月には県知事選もあるからだろう。

 だが、この問題は両国が1996年に普天間全面返還に合意して以来14年越しの懸案だ。現行計画は世界規模の米軍再編の不可分の一部でもある。遅れれば、アジア太平洋全体の米軍戦略や日米の共同抑止態勢にも重大な支障を来しかねない。首相は住民の期待や同盟の要請を踏まえて速やかに指導力を発揮する必要がある。

 鳩山政権は、アフガン政府が固執していないとの理由でインド洋補給支援を中止する意向だが、代替支援は何も決まっていない。

 核の傘についても、岡田克也外相は米国に核先制不使用宣言を求めて「日米で議論したい」と主張している。だが米国の核の傘は中国の軍拡や北朝鮮の核・ミサイル脅威に備え、日本の安全を担保する最大のよりどころだ。同盟の抑止の基盤を自ら放棄するような考え方には疑問がある。

 首相が掲げる東アジア共同体構想にも「米国排除にならないか」との懸念がある。鳩山政権は「緊密で対等な同盟関係の構築」を掲げてきたものの、今は同盟の不信を招きかねないのが実情だ。

 長官訪日を機にこれらの疑問や問題を解消すべきだ。首相が具体的な決断と行動で日米の信頼を高めることが第一歩になる。」


日米同盟の維持は、日本の国益に適うものであり、日米関係の根幹でもある。日本が米国の属国状態なのは事実だが、米軍によって、日本の安全保障が保たれ、必要最低限の防衛費の負担で済んだことが、今日の繁栄を手に入れたのもまた事実だからだ。鳩山政権ももっと現実に則した日米関係の構築に努力すべきである。
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豪

こんばんは!

ホント鳩政権は米国軽視、東アジア重視が顕著ですね…。


現実が見れてないというか妄想で日本を滅ぼそうとしてます。

迷惑な話です…。

by (2009-10-20 23:54) 

gaiagear

豪さん、ご訪問&コメント&TBありがとうございます。
全く、鳩ポッポ政権の現実感のない政策の非常識さにはいつも呆れるばかりです。
このまま民主党が4年間も政権与党として居座るとしたら、日本はどうなってしまうのか心配です。
by gaiagear (2009-10-21 09:39) 

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