今そこにある危機(189) [国際・政治情勢]
「アフガン復興支援50億ドルは「捨て金」だ
2009年11月13日(金)14時0分配信 プレジデントロイター
「自衛隊をアフガニスタンの復興支援に派遣する発想は持ち合わせていない」
鳩山首相は4日の衆院予算会でこういった。そして自衛隊に代わって「一般の方々の支援」というフレーズを口にした。
NGOを中心に、アフガニスタンではすでに日本の民間人が活動している。「人の貢献」では民間にお願いして自衛隊派遣は封印するという。インド洋での給油活動も1月で終わらせる。
その代わりとでもいうように、首相は10日、5年で50億ドル(約4500億円)のアフガニスタン復興支援を決めた。支援金は元タリバン兵士の職業訓練や警察官の給与にあてられるという。これはまさしくカネで済ます「小切手外交」の復活である。
情けないのは、金銭的支援を発表したのが、オバマ大統領来日の3日前だったことである。カネで賄えることは決して小さくないので実質的支援を考えると、支援金を出すことは決して悪いことではないが、なぜオバマ来日直前なのか。外交的な「みやげ」を持たせる意味なら50億ドルは捨て金である。
最初から本気で支援するつもりならば、鳩山政権の誕生直後、大々的に発表して使途する分野を特定して世界のメディアに発信していたら効果は違っていた。後手に回った復興支援策は結局、湾岸戦争時と同じで、遅刻気味のタイミングで「カネだけだしますから、あとはよろしく」的な結末になってしまった。過去から何を学んでいるのだろうか。
自衛隊の直接派遣が憲法上の制約によって困難であることはアメリカ側もよくわかっているが、本気で派遣する気があるのなら時限立法を成立させて、陸自を国際治安支援部隊(ISAF)に派遣してもいい。けれども、鳩山首相はそのオプションを早々と捨てた。
私は国際紛争での武力の使用を否定していない。だから「絶対に戦争をすべきではない」という考え方はもたない。必要な時には武器を持たざるを得ない。たとえば91年の湾岸戦争では日本も多国籍軍に入って戦うべきだった。
もちろんアメリカに勧められるからではない。自らの意思で決めるのである。パシフィズム(平和主義)は理念的には崇高だが、紛争の解決にあたっての達成力という点で大きな議論の余地がある。犠牲の上に成りたつ現実的な和平の実現という考え方もある。
ISAFに参加する国の派遣人数(11月10日現在)をみると、アメリカを除いてイギリスが9000人でトップ。続いてドイツの4365人、フランスの3095人、カナダ2830人、イタリア2795人、オランダ2160人などヨーロッパ諸国を中心に約40カ国が兵士を送っている。
10月末には韓国が300人を派遣することを決めたばかりだ。ワシントンでは近年、「日本よりも韓国の方が国際貢献度ははるかに高い」といわれており、日本のプレゼンスは下がり続けている。
ただアフガニスタンでの対テロ戦争では、増派はほとんど功を奏しない可能性が高い。アフガニスタンにいるマクリスタル司令官は、9月にゲーツ国防長官に送付した報告書で、「今後1年以内に国際テロ組織の勢いをそいで米軍が優勢を保たないと、テロ組織を撃退することはできない」と結論づけている。そうした状況から、今になってオバマ大統領は増派に慎重で、出口戦略を検討しはじめた。
今月10日、ロシアのゴルバチョフ元大統領が「米軍はアフガニスタンから撤退すべき」と忠告してもいる。勝利はないとの経験に基づいた見立てからで、情勢を冷徹に見極めれば、日本はオバマ大統領に真剣に撤退を促してもいい。
<意味不明な「対等な日米関係」の中身>
一方、オバマ政権はいまだに鳩山政権の外交政策の態度を見極められずにいる。普天間基地の移設問題での閣僚のちぐはぐな見解や、「対等な日米関係」の真意は日本人でさえも不明瞭だ。
アメリカの外交官として38年間のキャリアがあり、日本滞在も長かったラスト・デミング氏は今月6日、ワシントンのある会合に出席してこう発言した。
「鳩山首相はより対等な日米関係を目指そうとしている。これが以前よりもバランスのとれた日米関係を構築するという意味であれば歓迎したい。しかし、本質的に何を意味するのかまだはっきりしていない。対等な関係というのは、国際的にこれまでよりも積極的な責務を果たすことなのか。そのあたりは明確ではない」
真っ当な疑問である。
日米両国の同盟関係で、厳密な意味での「対等な関係」はありえない。特に安全保障分野での既存のパワーバランスは、横綱と幕下ほどの力の差がある。
鳩山首相のいう「対等な関係」とは、単にアメリカ政府に何でもモノを言えるようになることを意味しているのか。それとも日本もアメリカが策定する安全保障戦略や経済戦略と同じレベルで戦略をもち、遂行していく準備を整えるということなのか。
首相の意図するのは前者であろう。というのも、日本政府は独自のアフガニスタン戦略さえ策定していないばかりか、テロ戦争に実質的に参加してもいないからだ。
オバマ大統領の外遊の目的の一つは、ブッシュ政権によって世界中でダメージを受けたアメリカの威信を回復することである。ただ、複雑化する世界で、アメリカ一国ですべての問題を解決することは困難との認識をオバマ大統領はもつ。
鳩山首相がオバマ大統領の盟友として、本当に国際問題の解決に関与できれば、日米関係は50周年を迎えてさらに「再生」できるに違いない。」
鳩山首相のいう「対等な関係」とは、単に米国政府に何でも我が儘にモノを言えるようになることを意味しているのであり、日本が真の独立国家として、米国の同盟国として、国力に見合った軍事力を構築し、現在の片務的な日米同盟をかつての『日英同盟』のように対等な同盟関係へ移行するというものでは全くないでしょう。民主党が政権を握っている限り、日米関係は悪化の一途を辿るだけですね。
2009年11月13日(金)14時0分配信 プレジデントロイター
「自衛隊をアフガニスタンの復興支援に派遣する発想は持ち合わせていない」
鳩山首相は4日の衆院予算会でこういった。そして自衛隊に代わって「一般の方々の支援」というフレーズを口にした。
NGOを中心に、アフガニスタンではすでに日本の民間人が活動している。「人の貢献」では民間にお願いして自衛隊派遣は封印するという。インド洋での給油活動も1月で終わらせる。
その代わりとでもいうように、首相は10日、5年で50億ドル(約4500億円)のアフガニスタン復興支援を決めた。支援金は元タリバン兵士の職業訓練や警察官の給与にあてられるという。これはまさしくカネで済ます「小切手外交」の復活である。
情けないのは、金銭的支援を発表したのが、オバマ大統領来日の3日前だったことである。カネで賄えることは決して小さくないので実質的支援を考えると、支援金を出すことは決して悪いことではないが、なぜオバマ来日直前なのか。外交的な「みやげ」を持たせる意味なら50億ドルは捨て金である。
最初から本気で支援するつもりならば、鳩山政権の誕生直後、大々的に発表して使途する分野を特定して世界のメディアに発信していたら効果は違っていた。後手に回った復興支援策は結局、湾岸戦争時と同じで、遅刻気味のタイミングで「カネだけだしますから、あとはよろしく」的な結末になってしまった。過去から何を学んでいるのだろうか。
自衛隊の直接派遣が憲法上の制約によって困難であることはアメリカ側もよくわかっているが、本気で派遣する気があるのなら時限立法を成立させて、陸自を国際治安支援部隊(ISAF)に派遣してもいい。けれども、鳩山首相はそのオプションを早々と捨てた。
私は国際紛争での武力の使用を否定していない。だから「絶対に戦争をすべきではない」という考え方はもたない。必要な時には武器を持たざるを得ない。たとえば91年の湾岸戦争では日本も多国籍軍に入って戦うべきだった。
もちろんアメリカに勧められるからではない。自らの意思で決めるのである。パシフィズム(平和主義)は理念的には崇高だが、紛争の解決にあたっての達成力という点で大きな議論の余地がある。犠牲の上に成りたつ現実的な和平の実現という考え方もある。
ISAFに参加する国の派遣人数(11月10日現在)をみると、アメリカを除いてイギリスが9000人でトップ。続いてドイツの4365人、フランスの3095人、カナダ2830人、イタリア2795人、オランダ2160人などヨーロッパ諸国を中心に約40カ国が兵士を送っている。
10月末には韓国が300人を派遣することを決めたばかりだ。ワシントンでは近年、「日本よりも韓国の方が国際貢献度ははるかに高い」といわれており、日本のプレゼンスは下がり続けている。
ただアフガニスタンでの対テロ戦争では、増派はほとんど功を奏しない可能性が高い。アフガニスタンにいるマクリスタル司令官は、9月にゲーツ国防長官に送付した報告書で、「今後1年以内に国際テロ組織の勢いをそいで米軍が優勢を保たないと、テロ組織を撃退することはできない」と結論づけている。そうした状況から、今になってオバマ大統領は増派に慎重で、出口戦略を検討しはじめた。
今月10日、ロシアのゴルバチョフ元大統領が「米軍はアフガニスタンから撤退すべき」と忠告してもいる。勝利はないとの経験に基づいた見立てからで、情勢を冷徹に見極めれば、日本はオバマ大統領に真剣に撤退を促してもいい。
<意味不明な「対等な日米関係」の中身>
一方、オバマ政権はいまだに鳩山政権の外交政策の態度を見極められずにいる。普天間基地の移設問題での閣僚のちぐはぐな見解や、「対等な日米関係」の真意は日本人でさえも不明瞭だ。
アメリカの外交官として38年間のキャリアがあり、日本滞在も長かったラスト・デミング氏は今月6日、ワシントンのある会合に出席してこう発言した。
「鳩山首相はより対等な日米関係を目指そうとしている。これが以前よりもバランスのとれた日米関係を構築するという意味であれば歓迎したい。しかし、本質的に何を意味するのかまだはっきりしていない。対等な関係というのは、国際的にこれまでよりも積極的な責務を果たすことなのか。そのあたりは明確ではない」
真っ当な疑問である。
日米両国の同盟関係で、厳密な意味での「対等な関係」はありえない。特に安全保障分野での既存のパワーバランスは、横綱と幕下ほどの力の差がある。
鳩山首相のいう「対等な関係」とは、単にアメリカ政府に何でもモノを言えるようになることを意味しているのか。それとも日本もアメリカが策定する安全保障戦略や経済戦略と同じレベルで戦略をもち、遂行していく準備を整えるということなのか。
首相の意図するのは前者であろう。というのも、日本政府は独自のアフガニスタン戦略さえ策定していないばかりか、テロ戦争に実質的に参加してもいないからだ。
オバマ大統領の外遊の目的の一つは、ブッシュ政権によって世界中でダメージを受けたアメリカの威信を回復することである。ただ、複雑化する世界で、アメリカ一国ですべての問題を解決することは困難との認識をオバマ大統領はもつ。
鳩山首相がオバマ大統領の盟友として、本当に国際問題の解決に関与できれば、日米関係は50周年を迎えてさらに「再生」できるに違いない。」
鳩山首相のいう「対等な関係」とは、単に米国政府に何でも我が儘にモノを言えるようになることを意味しているのであり、日本が真の独立国家として、米国の同盟国として、国力に見合った軍事力を構築し、現在の片務的な日米同盟をかつての『日英同盟』のように対等な同盟関係へ移行するというものでは全くないでしょう。民主党が政権を握っている限り、日米関係は悪化の一途を辿るだけですね。
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タグ:国際・政治情勢
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