火星に数万年前の水の痕跡 [社会情勢]
「火星に数万年前の水の痕跡
2009年12月4日(金)17時31分配信 ナショナルジオグラフィック
2009年10月11日、火星探査車スピリットが暗い地面にロボットアームを伸ばす様子を探査車自ら撮影した。スピリットは2009年4月に埋め立て型クレーター表面の固い層を左前輪で踏み抜いて以来、この場所から動けなくなっている。 しかし砂に足をとられている間に、スピリットは価値ある地層を発見した。2009年12月の発表によればスピリットは、火星に比較的最近地下水が存在したことの手掛かりとなる鉱物の層を掘り当てたという。Picture courtesy NASA/JPL-Caltech
火星に比較的最近まで地下水が存在した証拠が発見された。NASAの火星探査車スピリットは、砂に車輪をとられ立ち往生している間に、この貴重な発見をものにした。
約6カ月間、スピリットは火星の赤道付近の浅いクレーターの縁に不安定な体勢で乗っている。この一帯は、溶岩流が冷えて固まったところに隕石の衝突によるくぼみが多数できている。通常の探査走行中、砂で埋め立てられた衝突クレーターの表面を覆う薄くて固い土の層を踏み抜き、その下の柔らかい砂に車輪が半分埋まってしまった。
NASAの担当チームは11月上旬から、この砂地からスピリットを脱出させるために遠隔操作を続けている。自らの救出作業を試みる中で、スピリットは土を跳ね上げ色鮮やかで柔らかい、実に興味をそそる砂の層を掘り当てたのだ。NASAが地球からスピリットを操作して細かく観察した際、地球では液体の水が存在する場所でしか形成されない鉱物として知られる硫酸塩がこの地層に含まれることを発見した。
火星探査車プロジェクトのメンバーである、セントルイスにあるワシントン大学の惑星科学者レイ・アービッドソン氏によれば、スピリットとその双子の探査車オポチュニティは、以前にも別の場所で硫酸塩を豊富に含んだ土壌を発見している。しかし、ほとんどのミッションは前もってスケジュールが設定されているため、探査車が静止状態で硫酸塩を綿密に調査する時間を十分に取ることができたのは今回が初めてだった。
スピリットが得たデータによると、今回発見した硫酸塩が、数十億年前に溶岩と硫酸塩を大量に含んだ蒸気が火星の地表に点在する火山の噴火口から噴き出した“水の噴出”があったことの証拠となるかもしれない。
しかしクレーターには、少なくとも長期的な尺度で考えた場合、火星には液体の水が存在し続けていることを示す手掛かりも見られる。クレーターの土壌は大量の硫酸鉄から成り、その表面を薄い硫酸カルシウムが覆っている。アービッドソン氏は「このように地層が形成されている例が確認されたのは初めてだ」と話す。
火星は、自転軸の傾きが変動しているため、いずれかの極が数億年の周期で太陽に正面に向くことがあるが、この地層形成は、火星の赤道付近ではこの周期に合わせて長い間降雪が続いていたという説を裏付けるものだ。
極が太陽の正面に向くと、その極では氷が固体から直接気体に変化する昇華という現象が起きる一方で、気温が大幅に下がった赤道では雪が降ったと考えられる。
現在の火星は気温があまりに低く、大気の層も薄すぎるため、地表に水が液体で存在することはできない。しかし、赤道付近の土壌は色が暗く熱を閉じ込めやすいため、周期的に地軸が傾く間に積雪の最下層が溶けて液体になっていたと考えられる。水は硫酸塩分が豊富な土壌と混ざり、硫酸鉄をさらに地下深くまで運び、表面に硫酸カルシウムの層を残すことになる。
赤道の雪が消えるまでには千年単位の時間がかかった可能性がある。アービッドソン氏によれば、雪がとけると同時に地下水も直接気体となって大気中に蒸発する。「そして残されたのがこの美しい地層で、硫酸カルシウムの豊富な表面の固い層をスピリットが砕いたのだ」。
スピリットが調査をしている地表の層は、赤道付近で数万年前に起きた最も新しい降雪の時期にできた可能性があることになる。
Ker Than for National Geographic News」
火星にも雪が降った時期があったんですね。最近、新発見が続きます。いろいろ勉強になりますなあ。
2009年12月4日(金)17時31分配信 ナショナルジオグラフィック
2009年10月11日、火星探査車スピリットが暗い地面にロボットアームを伸ばす様子を探査車自ら撮影した。スピリットは2009年4月に埋め立て型クレーター表面の固い層を左前輪で踏み抜いて以来、この場所から動けなくなっている。 しかし砂に足をとられている間に、スピリットは価値ある地層を発見した。2009年12月の発表によればスピリットは、火星に比較的最近地下水が存在したことの手掛かりとなる鉱物の層を掘り当てたという。Picture courtesy NASA/JPL-Caltech
火星に比較的最近まで地下水が存在した証拠が発見された。NASAの火星探査車スピリットは、砂に車輪をとられ立ち往生している間に、この貴重な発見をものにした。
約6カ月間、スピリットは火星の赤道付近の浅いクレーターの縁に不安定な体勢で乗っている。この一帯は、溶岩流が冷えて固まったところに隕石の衝突によるくぼみが多数できている。通常の探査走行中、砂で埋め立てられた衝突クレーターの表面を覆う薄くて固い土の層を踏み抜き、その下の柔らかい砂に車輪が半分埋まってしまった。
NASAの担当チームは11月上旬から、この砂地からスピリットを脱出させるために遠隔操作を続けている。自らの救出作業を試みる中で、スピリットは土を跳ね上げ色鮮やかで柔らかい、実に興味をそそる砂の層を掘り当てたのだ。NASAが地球からスピリットを操作して細かく観察した際、地球では液体の水が存在する場所でしか形成されない鉱物として知られる硫酸塩がこの地層に含まれることを発見した。
火星探査車プロジェクトのメンバーである、セントルイスにあるワシントン大学の惑星科学者レイ・アービッドソン氏によれば、スピリットとその双子の探査車オポチュニティは、以前にも別の場所で硫酸塩を豊富に含んだ土壌を発見している。しかし、ほとんどのミッションは前もってスケジュールが設定されているため、探査車が静止状態で硫酸塩を綿密に調査する時間を十分に取ることができたのは今回が初めてだった。
スピリットが得たデータによると、今回発見した硫酸塩が、数十億年前に溶岩と硫酸塩を大量に含んだ蒸気が火星の地表に点在する火山の噴火口から噴き出した“水の噴出”があったことの証拠となるかもしれない。
しかしクレーターには、少なくとも長期的な尺度で考えた場合、火星には液体の水が存在し続けていることを示す手掛かりも見られる。クレーターの土壌は大量の硫酸鉄から成り、その表面を薄い硫酸カルシウムが覆っている。アービッドソン氏は「このように地層が形成されている例が確認されたのは初めてだ」と話す。
火星は、自転軸の傾きが変動しているため、いずれかの極が数億年の周期で太陽に正面に向くことがあるが、この地層形成は、火星の赤道付近ではこの周期に合わせて長い間降雪が続いていたという説を裏付けるものだ。
極が太陽の正面に向くと、その極では氷が固体から直接気体に変化する昇華という現象が起きる一方で、気温が大幅に下がった赤道では雪が降ったと考えられる。
現在の火星は気温があまりに低く、大気の層も薄すぎるため、地表に水が液体で存在することはできない。しかし、赤道付近の土壌は色が暗く熱を閉じ込めやすいため、周期的に地軸が傾く間に積雪の最下層が溶けて液体になっていたと考えられる。水は硫酸塩分が豊富な土壌と混ざり、硫酸鉄をさらに地下深くまで運び、表面に硫酸カルシウムの層を残すことになる。
赤道の雪が消えるまでには千年単位の時間がかかった可能性がある。アービッドソン氏によれば、雪がとけると同時に地下水も直接気体となって大気中に蒸発する。「そして残されたのがこの美しい地層で、硫酸カルシウムの豊富な表面の固い層をスピリットが砕いたのだ」。
スピリットが調査をしている地表の層は、赤道付近で数万年前に起きた最も新しい降雪の時期にできた可能性があることになる。
Ker Than for National Geographic News」
火星にも雪が降った時期があったんですね。最近、新発見が続きます。いろいろ勉強になりますなあ。
ローバー、火星を駆ける―僕らがスピリットとオポチュニティに託した夢
- 作者: スティーヴ スクワイヤーズ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/09
- メディア: 単行本
火星-赤い惑星の46億年史―火星の科学入門最新版 (NEWTONムック)
- 作者: フランソワ・フォルジェ
- 出版社/メーカー: ニュートンプレス
- 発売日: 2009/01
- メディア: 大型本
タグ:社会情勢
コメント 0