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今そこにある危機(184) [国際・政治情勢]

「鳩山政権の「劣化」はどこで止まるか【山崎元コラム】

山崎 元(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)

(ダイヤモンドオンライン 2009年11月11日配信掲載) 2009年11月12日(木)配信

<現実への失望>

 自分で選んだはずなのに、実現してみると「こんなはずではなかった」と思うことがある。就職や転職にはそうしたことがよくあるし、結婚でもそう思う場合があるだろう。「政権交代」もその仲間なのかも知れない。こうした場合、期待が大きい分の落胆もあるし、逆に自分の選択を否定したくないという心理も働き、客観的な状況把握が難しい。

 前任の何人かとは異なるインテリジェンスと華やかさを持って登場した、新政権の顔、鳩山由起夫首相であったが、最初に与えてくれた軽い失望は、記者クラブ所属以外のメディアに対しても開放するはずであった首相の記者会見を、実際には開放しなかったことだ。この事情はダイヤモンド・オンラインの上杉隆氏の記事に詳しいが、こんな筈ではなかったのだ。

 これは、直ちに天下国家を揺るがすような大問題ではないが、民主党の「約束」がこんなに簡単に破られることに対して、違和感を感じたのは確かだ。この問題については、平野官房長官が悪役を買っている印象なのだが、鳩山首相本人が矢面に立たないからといって、彼に説明責任がないわけではない。

 自他共に認める鳩山首相の側近である平野官房長官に関連する問題としては、官房機密費に関する情報公開を拒否する姿勢にも鳩山・平野コンビの非誠実を感じる。官房機密費の支出の内容が全く公開されないことに関して、野党時代の民主党は大いに批判的であったはずなのだが、鳩山首相は「相手があることなので(情報公開は)難しい面がある」と歯切れが悪く、平野長官に至っては「私が適切に判断しているのでご信頼いただきたい」と開き直る始末だ。しかし、民主党としての見解の連続性を不問にしたまま「信じろ」と言われても、こんな男を信頼できるはずがない。

 率直に言って、平野官房長官の存在は鳩山内閣のイメージ・ダウンにもつながっているのではないかと思うが、政治家の言葉の重みと問題の重要性を考えると、先ず、内閣の責任者であり、平野官房長官の任命者でもある鳩山氏の責任を問うのが正しい筋道だろう。

 平野官房長官に任せている案件だけが問題なのではない。現在、東京地検が捜査中の鳩山首相の偽装献金問題も重大で、且つ国民としては納得しにくい問題だ。「信頼していた秘書」による不正で、本人は把握していなかったという言い逃れをする積もりに見えるが、鳩山氏は、かつて社民党の土井たか子氏の政策秘書が関与した秘書給与の略取事件で、秘書が起こした問題は政治家本人が責任を取るべきだとの追求を行っていた。これはそのまま自分にあてはまるのではないか。

 これまでの報道によると、問題の資金は、鳩山氏本人の財産あるいは鳩山氏の親族から鳩山氏に流れたもののようだ。しかし、仮に賄賂などの絡まない鳩山由紀夫氏(同夫妻?)の単純な生活費であるとしても、有権者が判断材料とすべき政治資金の出所に関する情報を偽ったものだし、脱税と解釈できる可能性のある資金の動きでもある。鳩山首相は先般別件で7000万円以上の所得に関する修正申告を行ったが、自分の周囲の金銭問題もろくに管理できない人物に国の行政を任せて大丈夫なのか。

 率直に言って、鳩山氏が首相を(純粋な人であれば議員も)辞任したとしても、筆者は驚かない。むしろ、野党である自民党がこの問題についての追求に徹底を欠いていることにこそ意外感がある。この臨時国会では、この点に絞って攻めるのかと思っていた。「似たもの同士」の追及では、限界があるということなのか。

 尚、国会議員であり、さらに首相でもある鳩山氏が、献金問題について自ら説明しないのは全くおかしい。捜査には全面的に協力しているというが、疾しいことがなければ、自分で事実を説明すればいい。自分の説明と捜査等を受けて後から判明した事実が異なれば嘘つきとして辞任は当然だ。一方、これだけ重大な問題について今に至るも事実を把握していないとすれば、政治家として不真面目だし、問題を重く受け止めていないということだろう。この場合も議員失格だ。「捜査中」であることが、自分で説明しないことの理由になるのは、たとえば先頃禁止薬物の使用で有罪判決を受けた俳優の押尾学容疑者レベルの小悪党までだろう。公人中の公人である首相の場合、政治家としての自分の行いに対して無関心であることが許されるわけがない。事実を自分から説明するのが当然だ。

<ライバルに近いレベルまで劣化する>

 そして、鳩山内閣の言行不一致でさらに深刻且つショッキングだったのは、日本郵政の首脳人事に露骨に見られたような官僚の「天下り」を容認する人事だった。斎藤次郎社長や坂篤郎副社長の人事は明らかに天下りの範疇だろう。この人事を挟んで、鳩山内閣の支持率が約10%下落したのは当然だ。

 ここまで見てきたように、鳩山首相を中心とする新政権には、「嘘だ!」と言いたくなるような不始末が幾つも登場している。これらを不問に付していけないことは明らかだ。国民として適切に怒ることも大事だが、単に声を大にして非難しても問題は解決に向かいそうにないし、次の選挙は遠い。どんな理由で何が起こりつつあるのか、また、鳩山内閣の劣化はどの程度まで進むのかを少しでも見極めたい。

 官僚の天下りを認める民主党政権の方針転換の意味は、官僚全体を敵に回すのではなく、民主党に協力的な官僚については「豊かな将来につながる処遇」の可能性があるとのエサをぶら下げることで、各種の利権を共有しようということだ。官僚の協力による権力の強化が必要なのは、かつて「大連立」構想が頓挫したときに、当時代表だった小沢一郎氏が「民主党には(十分な)政権担当能力がない」と言っていたことを考え合わせると、当然の選択なのかも知れない。

 官僚を敵視し、官僚の利権を奪うかのように見せて、その実、官僚に行政を任せ、本格的な官僚制度改革には手を着けないという先例は、国民は小泉政権の際に一度経験済みだ。今回も似たことが起こるのだろうか。

 ここで国民の選択肢を考えると、野党である自民党に対して、民主党政権への批判とチェックは期待できようが、今だ記憶に新しい近年の自民党政権の状況を考えたときに、「それでは自民党に政権を戻そう」という選択は今のところ取り難いのではないか。

 勢力が拮抗する二大政党による政治を権力獲得のゲームとして眺めると、両者何れも「中間層」を確保することによって権力を握ることができるので、両者が選挙で提示する政策が似たものになり、さらに行動も似たものになりがちなことは、よく知られている。たとえば、アメリカの民主・共和両党の政策は大統領選挙の投票が近づくと接近してくるし、選挙の結果、主に反戦平和を語る役割の民主党が政権を取ってもアメリカは戦争という巨大な公共事業を止めるわけではない。選挙で物事を決められるというのは幻想だ。

 また、仮に、「腐敗や背信」が国民の政党選択に大きな影響を与えると考えた場合、A党・B党二つの二大政党があれば、B党はA党よりも「少しマシ」なレベルまで、「腐敗や背信」を犯すことが出来る。「自民党政権になっても、記者クラブと政府の癒着は続くし、官房機密費は公開されないし、官僚制度改革は結局進まないのだろう」と国民が思っている限り、民主党がこれらの問題で国民との約束を破ったり、期待を裏切ったりしても、決定的なダメージにはならない。

 二大政党は、権力獲得競争による切磋琢磨を通じてレベルアップする可能性もあるが、逆に、お互いの間合いを計りながら、腐敗・背信の度合いを高めて利権を確保する方向に変わることもあり得る。残念ながら、今の日本の政治で起こりつつある現象は、後者なのかも知れない。

 仮に、内閣支持率40%割れを政権の賞味期限切れと考えて、日本郵政の首脳人事くらいのレベルの「裏切り」や政権の「失敗」が一つずつで10%の内閣支持率の低下があるとすると、鳩山首相の持っている「背信」の余裕はあと二つだ。首相を代えると、また60%くらいの支持率からスタートできるだろうから、可能な背信は、さらにもう二つくらいある。現政権には、かなりの自由度があり、「国民がイメージする自民党政権よりも少しマシ」な点まで劣化しつつ、利権を謳歌する余地がある。

 小沢一郎民主党幹事長は閣僚ではないので、国会で質問の矢面に立ったり、行政的な不始末の責任を取ったりする機会はほぼない。しかし、現実的には彼が党を通じて国会も政府も掌握しつつあり、実質的な権力者だ。彼が何を考え、実行しようとしているかのチェックは欠かせない。新聞社など、世論調査を発表しているメディアは、内閣支持率の調査に加えて、「小沢一郎氏が幹事長を務める民主党の政策を支持しますか?」という「小沢支持率」の調査を継続的に行うといいのではないだろうか。首相の任期よりも小沢支配の期間の方が長続きする可能性は大いにあるから、やってみる価値があるのではないか。」


筆者のイイタイコトは良く分かる。期待していた民主党への失望の大きさも分かる。ただ分からないのは、ここまで、民主党の負の大部分が露呈した現在でも、まだ、自民党よりマシだと思っている所である。どう考えても、自民党の方が、まだマシだったのではないかと私は思う。自民党が真の保守政党として再生し、政権を奪還することこそが、現在の日本を救うのではないだろうか!?もうこれ以上、民主党に何も期待することはできないと思う。日本国民は、明らかに選択を誤ったのだと私は言いたい。

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