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今そこにある危機(77) [国際・政治情勢]

「日本が安全保障に本気にならなければ、アメリカは舵を切る

冗談ではなくなってきた「米中軍事同盟」という悪夢=北村淳

(SAPIO 2009年9月30日号掲載) 2009年10月15日(木)配信

文=米海軍テクニカルアドバイザー 北村淳

 オバマ政権が対中重視姿勢を示す中で気がかりなのは、安全保障分野である。中国が空母建造などの米国を意識した海洋戦略を描くなか、軍事面での“G2同盟”は有り得るのか? そして両国に挟まれた日本はどうなるのか? 米海軍テクニカルアドバイザーの北村淳氏が読み解く。

 米国の対外戦略の伝統的鉄則は、「特定地域での米国の各種経済活動の自由を確保するために、その地域を独占的に支配する大国の存在を許さない」というものである。

 このような国際関係論上の“大国”というのは、あくまで軍事的に強力な国家という意味である。特定地域に大国が全く存在していなければ、米国にとってそれに越したことはない。しかし、そうでない場合は、米国以外に少なくともふたつ以上の大国が存在して、互いに牽制し合う構造が望ましい。この場合、米国は自国の国益のためにいずれか一方と同盟関係を構築するかもしれないし、双方と等しい距離で接するかもしれない。

 もし大国がひとつしか存在しない場合には、第二の方策として、その地域における米国の国益を安泰にしておくために、軍事力を背景とした多国間集団安全保障体制を構築したり、特定の国を軍事的に保護国化して、覇を唱えようとする大国を牽制する。

 それが功を奏さなかった場合には、第三の方策として、その大国を軍事的に無力化してしまうか、あるいはその大国と軍事的妥協を計り、対象地域での米国の勢力をある程度維持する戦略、いずれかを選択することになる。

 現状の日米安保体制をこのような文脈にあてはめると、第一の方策に含まれる同盟関係とみなすことはできず、第二の方策のひとつである保護国利用策の一種ということができる。

 つまり、中国は紛れもなく東アジアにおける大国であるが、軍事的に欠陥のある日本が単独で中国に対抗することができない状況であるから、米国は自国の国益を維持するために日本の軍事的後ろ楯となって、中国の単独覇権を妨害する防波堤としている。その見返りとして、日本は真剣な国防努力をせずとも米軍の支援を期待できる体制が(現実にどのように作動するかは別として)確保されている。

 このように現在の日米安保体制は軍事的には「日米同盟」とはみなせず、米国による準保護国体制(国民が明確に保護国との認識をしている程には完全な保護国にはなっていない)といった代物である。

<米国が望む 日本の軍事力増強>

 イランやアフガニスタン情勢で軍事的資源の余裕が無くなってきている米国にとっては、日本が自分自身の国防体制すら本腰を入れて確立していない状態から一刻も早く脱却して、少なくとも経済力に見合った程度の国防能力を保持することを期待している(高価な装備の保有という意味ではなく、適切な戦略と組織を構築するということ)。

 日本がある程度中国を牽制できるだけの大国になれば、それでも真の意味での「日米同盟」を維持することは必要であるものの、米国は東アジアに対処すべき軍事力を大幅に削減することが可能になる。そして、対テロ戦争へ軍事力を集中させることができるのである。

 実際に、米軍太平洋集団(太平洋軍)関係の戦略家の中には「現状の片務的な日米安保体制を、より国際常識に則った軍事的協力関係の日米同盟に転換することが必要だ。増強目覚ましい中国軍を牽制して東アジア地域での中国単独の覇権確立を妨げ、台湾の軍事的・政治的独立を維持し、米国の対東アジア通商活動も現状を維持することこそ、望ましい戦略環境である」と考えている者が少なくない。

 一方日本では、「日本が軍事力を強化して米国の紐付きでない自立的大国になった場合には、米国が日本を警戒して日本を牽制するために米中同盟を構築するのではないか?」といった疑念を耳にすることもある。しかし、幸か不幸かそのような疑念は米国軍事専門家の間ではほとんど生じていない。

 何故ならば米軍関係者達によると「日本が再軍備を進めて中国に対抗しうる程度の大国の地位を確立したとしても、その程度の軍事的能力では強大な米国の軍事的能力と比べると“未だに恐れるに足りない”」程度だからである。

 このような真の「日米同盟」の構築にとって最大の障壁は、「日本のやる気」である。

 いくら太平洋集団関係の将官や戦略家達が「米国と日本は地政学的に考えてナチュラル・アライ(理にかなった同盟国)だ」と口癖のように言っていても、肝心の日本自身が確固たる決意のもとに適正な国防能力を保持しないかぎり、日米関係は真の同盟ではなく保護国関係のままだ。

 ところが、専守防衛の解釈や武器輸出三原則、そして非核三原則をはじめとする日本国内での軍事的異常状態は、国際常識と余りにもかけ離れており、日本人以外の人々の想像を超越したレベルのものである。そのことを正しく認識している者は、少なくとも米軍太平洋集団で対東アジア戦略を担当している者の中にはいない。

 ただし最近になって、太平洋集団関係者から「冷戦構造が終結して10年以上も経過したのに、自衛隊の南西シフトはまだ進んでいないが、やる気があるのか?」「陸自はいつになったら海兵隊的能力(緊急展開能力・水陸両用能力)を獲得するのか?」「日本は戦略状況の大幅な変化に合わせて建艦プログラムを策定しないのか?」といった、日本自身の国防に必要な軍事力の整備に対する疑問の声を聞くことが多くなってきている。日本周辺の軍事的緊張の高まりとは裏腹に、遅々として進まない日本の国防事情に呆れ返っている米軍関係者が少なくない状況になりつつある。

 日本が可及的速やかに軍事的正常化を果たして、経済力に見合った大国の地位に到達しない場合には、現在少なくとも米軍太平洋集団関係者の間では主流といえる「日米同盟」確立推進派の考え方は排斥され、「このような軍事的に無能な日本との同盟関係は米国の戦略遂行にダメージを与える」と判断されるようになってしまう。

 そして米国の対外戦略立案者達は前述の第三の方策を模索するようになる。すなわち、ひとつは中国の軍事的能力を叩き潰してしまうか、あるいは若干の行動の制約はあるものの、この地域での米国の国益を最大限維持するために、東アジアで唯一の大国である中国と軍事的妥協を計る、の二者択一ということになる。

 しかしながら、いくら米国の軍事力が中国のそれを大幅に上回っているとはいえ(例えば、戦略核弾頭…中国約200発/米国約2000発、原潜…中国10隻/米国70隻、空母…中国0隻/米国11隻)、今や質・量ともに強大な中国の軍事力を叩き潰すことなど不可能な状況に立ち至っており、米国にとっての現実的な方策は軍事的妥協、つまり「G2同盟(実際に米中軍事同盟が締結されるわけではなく便宜上の呼称)」構築だけということになる。

<安保丸投げで 米国は中国に接近>

 ただし米国が中国と軍事的妥協を計るといっても、米国が日本を“捨て”て中国に“乗り換える”といった単純な話ではない。米国は軍事戦略的能力が欠落した日本を、強力な中国軍をはじめとする周辺の各種脅威から外交軍事的に保護する名目で、米国の基地列島としてしまうだろう。中国と軍事的妥協を計る際に、日本基地列島という軍事的足場を確保しておけば、米国は中国の思い通りの条件を受け入れる必要がなくなり、強い立場を維持して「G2同盟」を構築することができる。

 中国側としても「中国と米国による太平洋分割支配」などという強がりを公言していても、現実に米軍ならびに自衛隊と対決しながらこのような目標を達成するためには現在の数倍の海軍力構築が必要となり、とても算盤勘定が合わないことは百も承知である。このため、米国との軍事的妥協は「現実的落としどころ」として内心では熱烈歓迎なのである。

 日本が米国の完全な保護国に転落することによって誕生する「G2同盟」は、米中双方にとって、勢力均衡の上に東アジア地域の軍事的協同支配体制を確立することができ、双方の各種経済的利益を維持することができる。

 もちろん、現時点で米中の軍事的妥協を促進しようとする具体的な動きは、少なくとも米軍内部には公式的には存在していない。

 しかし、ペンタゴンや太平洋集団はじめ米軍諸機関が日本自身の安全保障に対して、鳥インフルエンザ対策や生物・化学・放射能兵器によるテロ活動への対処といった、日本国内で軍隊が関与するであろう具体的諸問題に対しても調査研究を実施したり、日本国防当局に対するプレゼンテーションを行なったりしている。そうした現状を目にすると、可能性がゼロではない将来の完全なる保護国化に備えているといった深読みもできなくはない。

 このように我々日本国民は、国家存亡の選択肢を突きつけられていることを明確に認識しなければならない。

 第一の選択肢は、「自国の安全保障を米国に丸投げするという安楽椅子は即刻投げ捨てて、日本の国防はできる限り日本自身で行なう戦略と組織を構築する努力を開始する」というものである。日本の自主防衛の要素として、真の「日米同盟」が構築されるため、米国としても中国との軍事的妥協は必要なくなる。

 ただし、日本が大国としての地位を確保するためには、自国の防衛だけではなく国際社会の様々なトラブルにも真剣に取り組む必要が生じ、平和ボケ日本社会にとっては実に苦しい選択肢である。

 第二の選択肢は、「面倒で物騒な国防や軍事などは米国に勝手にやらせて、米国の言いなりになっていれば生き延びられるのなら、国家の尊厳とか日本民族の誇りなどといって大変な思いをするより、よっぽど楽で良いではないか。軍事的自助努力などは放棄し、米国の完全な保護国の地位に甘んじて『G2同盟』体制下で綿々と生き延びようではないか」といった選択肢である。

 いずれの選択肢を選ぶのも、日本国民の自由なのである。」

「米核戦力の中枢を中国軍代表団に初めて公開へ

2009.10.15 09:46 産経新聞

 【ワシントン=山本秀也】米国防総省は14日、米国の核戦力を統括する戦略軍司令部(ネブラスカ州)を中国軍の高位級代表団に初めて公開する方針を明らかにした。今月24日から訪米する中国軍の制服組ナンバー2、徐才厚・中央軍事委員会副主席の視察先に同司令部が含まれていたことから判明した。

 中国は今月1日の軍事パレードで、米本土全域を射程圏に収める長距離弾道ミサイル東風(DF)31Aを公開したばかり。米側では軍事交流を通じた中国との相互の信頼醸成に、核戦力の透明性向上を織り込みたい考えだ。

 徐副主席の訪米は、今年7月に開かれた米中戦略経済対話での軍事交流の再開に関する合意に含まれていた。31日までの訪米中、徐副主席は26日にワシントンでゲーツ国防長官と会談する予定。同長官は「中国との良好でより深い戦略対話」に期待を表明している。

 国防総省ではこれまで、中国のミサイル部隊である第2砲兵部隊の靖志遠司令官に対し、戦略軍司令部の視察を認める計画を進めたことがあるが、実現しなかった。徐副主席一行は中国方面を担当する米太平洋軍司令部(ハワイ州)なども視察する。」

「亀井氏 「横田基地は必要ない」

2009.10.14 18:37 産経新聞


米軍横田基地=東京都福生市

 亀井静香郵政改革・金融相は14日、東京・内幸町の日本記者クラブで会見し、「沖縄をはじめ日本にある米軍基地は米国の極東軍事政策上、絶対不可欠なのか。たとえば、東京の横田基地は日本の安全保障にとって必要とは思っていない」と述べた。

 さらに「空域も米軍の管制下に置かれ、(日本の空域が)狭くなっている。(航空機同士の)ニアミスが起きたこともある。こういう問題も協議していくべきだ」と述べ、空域問題を含め横田基地の必要性を日米間の協議対象にすべきだとの考えを示した。」


上記の記事の如く、このまま鳩山民主党連立政権が4年間も続き、オバマ米民主党政権が続いたら、本当に『日米同盟の変質』から『米中軍事同盟の成立』へとなりかねませんね。その時は『日本の国家としての実質的滅亡』しかないでしょう。

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