今そこにある危機(268) [国際・政治情勢]
「【安全保障読本】(37)中国が「制空権」を確立する日
2010.2.15 23:27 産経新聞
「制空権を失った国家はそれを奪還できない。航空機産業を爆撃で破壊され、ほぼ同時に陸海軍の動員・維持手段も失っているからだ。その国家は戦争継続意志すら無くしてしまう」
第二次大戦において「戦略爆撃」など各国の航空戦力運用に大きな影響を与えたイタリア陸軍のジュリオ・ドゥーエ少将(1869~1930年)の戦略思想である。制空権獲得には敵の航空機や空母、基地の滑走路・格納庫・弾薬庫に加えレーダー・管制施設や防空拠点-などの破壊が前提となる。ドゥーエの思想には批判も多いが、「大陸間弾道弾出現で思想が実現した」「湾岸戦争で正しさが証明された」など評価も少なくない。
ただし、航続距離や燃料補給における航空戦力の限界、兵器の進化・多様化により空域を完全支配することは不可能で、制空権を現代では「航空優勢」と呼ぶ。ところが「制空権」を確立し得る軍事大国が将来、誕生するやもしれない。中国である。
中国空軍の何為栄・副司令官は昨年11月、最新鋭=第5世代戦闘機の国産開発を明らかにした上で「8~10年後の実戦配備」を宣言した。レーダーに捕捉されにくいステルス機能を持つ第5世代戦闘機の研究・開発は1990年代から観測され「殲14」と呼称されてきたが、軍高官による明言は初めてだった。
かつて制空権は爆撃機により達成されたが、今日ではステルス機が主役。日米軍事筋によると「殲14」は機体制御システムと推力偏向ノズル付きエンジンにより、空中戦で超機動性を有する。レーダーは対空・対地・対艦のマルチモード型で捜索・追跡距離も長く、同時に多数目標を追跡・攻撃できる-という。
副司令官の宣言から2週間後、中国とパキスタンが共同出資した中国技術による軽戦闘機「梟竜(きようりゆう)」の第1号機完成式典が開かれた。パキスタンは、ロシアに加え欧米から第5世代機の売り込みを打診されているインドと対(たい)峙(じ)する。そのパキスタンのギラニ首相が「わが国空軍のニーズを満たす戦闘機を設計してくれた」と絶賛した技術力も考慮の必要がある。梟竜は空中戦能力において米軍のF16戦闘機に匹敵(対地攻撃能力は劣る)する-との西側分析もある。もっとも、中国空軍は、既にF16に伍(ご)する第4世代戦闘機「殲10」を、既に配備している。
「質」の向上だけではない。経済の急速発展に加え、社会保障を遅らせても軍事を優先させる一党独裁国家の特性をフル活用し、「量」もすさまじい。作戦機は3000機に迫る。それに比し、自衛隊は400機を超える程度。主力のF15など質の高い戦闘機と操縦者の技量は頼もしいが、F15も今や前世代戦闘機になろうとしている。過去8年間で2600億円も減額されてきた防衛費は、来年度も減額される可能性が高い。いかに質でカバーしようとも「矢弾」が少なくては守りようがない。
中国空軍にとって昨年は、航空機技術の「開眼」年であった。研究開発から製造までを手掛けた200トン級大型軍用輸送機が完成した。戦略輸送を可能ならしめるだけではない。プラットホームを転用できる空中給油機や、電子偵察機、早期警戒機といった「制空権」確立に不可欠な支援態勢を、独力で保持できる第一歩を築いたのだ。輸送機を手掛けた中国航空工業集団公司は、米経済誌フォーチュンが発表した世界企業番付で426位に入った。中国軍需企業がランクインしたのは初めてで航空宇宙・軍需部門では11位に躍り出た。
「21世紀は空の時代。無限の空域を制すれば陸上・海洋・電磁領域において戦略的主導権を掌握できる」
中国空軍の許其亮・司令官は、「制空権」確立は「資源=海上交通路」の独占確保や台湾独立を実力阻止するに必要な「海洋覇権」にも不可欠だ-との戦略観を示唆している。司令官は「国土防衛型」から「攻守兼備型」へ脱皮し、それに伴う空軍力の底上げを明言。「空と宇宙での軍事競争は不可避で歴史的必然だ」とまで言い切った。
かくも不気味な軍事拡大戦略をひた走る中国に対し、民主党は「中国は現実的脅威ではない」としている。安全保障の危機を認識しようとしない鳩山由紀夫首相は外務・防衛省内でこう呼ばれている。
「ハトの耳に念仏」」
『ハトの耳に念仏』には、思わず笑ってしまったが、大東亜戦争時の日米空母決戦を見るまでもなく、『制空権』を取られた側には勝利はない。潜水艦の方が脅威という人もいるが、原子力潜水艦とて、空からの対潜攻撃には無力だ。第二次世界大戦時のドイツのUボートは大戦前半、大戦果を上げたものの、戦争末期は、米英の多数の護衛空母による対潜攻撃でほとんど戦果を得られず、Uボートはいたずらに撃沈されるのみとなった。
現在、中共支那の海空軍の増強は質・量共にすさまじい。ステルス性能を持つ『第五世代戦闘機』も急ピッチで開発中であるし、イージス艦や空母の建造にも乗り出している。対する日本の空自は、F-Xの選定でF-35を選んだものの、まだF-35は開発途上の機体である。日本独自のステルス戦闘機の開発の為、ステルス性能実証機として、『心神』なるものをモックアップし、フランスの施設で実験中だが、所詮、まだ『模型』の域をでない。
海自も『ひゅうが級ヘリコプター搭載護衛艦』2隻を配備し、その拡大改良型のヘリコプター搭載護衛艦2隻も建造されることになったが、中共支那が建造予定の6万トンの中型空母に比べると見劣りがする。
もし、将来、『日米同盟』が『破棄』された場合、自衛隊のみで日本を防衛するのは甚だ困難と言わざるを得ない。しかも、相手は核兵器を大量に保持し、原潜の配備も進んでいる。日本は『国是』として、『原子力』を『平和利用』以外には応用しないことになっている為、核武装や原潜等の建造は無理である。
日本がチベットなどの二の舞になるのはそう遠くない未来である。
2010.2.15 23:27 産経新聞
「制空権を失った国家はそれを奪還できない。航空機産業を爆撃で破壊され、ほぼ同時に陸海軍の動員・維持手段も失っているからだ。その国家は戦争継続意志すら無くしてしまう」
第二次大戦において「戦略爆撃」など各国の航空戦力運用に大きな影響を与えたイタリア陸軍のジュリオ・ドゥーエ少将(1869~1930年)の戦略思想である。制空権獲得には敵の航空機や空母、基地の滑走路・格納庫・弾薬庫に加えレーダー・管制施設や防空拠点-などの破壊が前提となる。ドゥーエの思想には批判も多いが、「大陸間弾道弾出現で思想が実現した」「湾岸戦争で正しさが証明された」など評価も少なくない。
ただし、航続距離や燃料補給における航空戦力の限界、兵器の進化・多様化により空域を完全支配することは不可能で、制空権を現代では「航空優勢」と呼ぶ。ところが「制空権」を確立し得る軍事大国が将来、誕生するやもしれない。中国である。
中国空軍の何為栄・副司令官は昨年11月、最新鋭=第5世代戦闘機の国産開発を明らかにした上で「8~10年後の実戦配備」を宣言した。レーダーに捕捉されにくいステルス機能を持つ第5世代戦闘機の研究・開発は1990年代から観測され「殲14」と呼称されてきたが、軍高官による明言は初めてだった。
かつて制空権は爆撃機により達成されたが、今日ではステルス機が主役。日米軍事筋によると「殲14」は機体制御システムと推力偏向ノズル付きエンジンにより、空中戦で超機動性を有する。レーダーは対空・対地・対艦のマルチモード型で捜索・追跡距離も長く、同時に多数目標を追跡・攻撃できる-という。
副司令官の宣言から2週間後、中国とパキスタンが共同出資した中国技術による軽戦闘機「梟竜(きようりゆう)」の第1号機完成式典が開かれた。パキスタンは、ロシアに加え欧米から第5世代機の売り込みを打診されているインドと対(たい)峙(じ)する。そのパキスタンのギラニ首相が「わが国空軍のニーズを満たす戦闘機を設計してくれた」と絶賛した技術力も考慮の必要がある。梟竜は空中戦能力において米軍のF16戦闘機に匹敵(対地攻撃能力は劣る)する-との西側分析もある。もっとも、中国空軍は、既にF16に伍(ご)する第4世代戦闘機「殲10」を、既に配備している。
「質」の向上だけではない。経済の急速発展に加え、社会保障を遅らせても軍事を優先させる一党独裁国家の特性をフル活用し、「量」もすさまじい。作戦機は3000機に迫る。それに比し、自衛隊は400機を超える程度。主力のF15など質の高い戦闘機と操縦者の技量は頼もしいが、F15も今や前世代戦闘機になろうとしている。過去8年間で2600億円も減額されてきた防衛費は、来年度も減額される可能性が高い。いかに質でカバーしようとも「矢弾」が少なくては守りようがない。
中国空軍にとって昨年は、航空機技術の「開眼」年であった。研究開発から製造までを手掛けた200トン級大型軍用輸送機が完成した。戦略輸送を可能ならしめるだけではない。プラットホームを転用できる空中給油機や、電子偵察機、早期警戒機といった「制空権」確立に不可欠な支援態勢を、独力で保持できる第一歩を築いたのだ。輸送機を手掛けた中国航空工業集団公司は、米経済誌フォーチュンが発表した世界企業番付で426位に入った。中国軍需企業がランクインしたのは初めてで航空宇宙・軍需部門では11位に躍り出た。
「21世紀は空の時代。無限の空域を制すれば陸上・海洋・電磁領域において戦略的主導権を掌握できる」
中国空軍の許其亮・司令官は、「制空権」確立は「資源=海上交通路」の独占確保や台湾独立を実力阻止するに必要な「海洋覇権」にも不可欠だ-との戦略観を示唆している。司令官は「国土防衛型」から「攻守兼備型」へ脱皮し、それに伴う空軍力の底上げを明言。「空と宇宙での軍事競争は不可避で歴史的必然だ」とまで言い切った。
かくも不気味な軍事拡大戦略をひた走る中国に対し、民主党は「中国は現実的脅威ではない」としている。安全保障の危機を認識しようとしない鳩山由紀夫首相は外務・防衛省内でこう呼ばれている。
「ハトの耳に念仏」」
『ハトの耳に念仏』には、思わず笑ってしまったが、大東亜戦争時の日米空母決戦を見るまでもなく、『制空権』を取られた側には勝利はない。潜水艦の方が脅威という人もいるが、原子力潜水艦とて、空からの対潜攻撃には無力だ。第二次世界大戦時のドイツのUボートは大戦前半、大戦果を上げたものの、戦争末期は、米英の多数の護衛空母による対潜攻撃でほとんど戦果を得られず、Uボートはいたずらに撃沈されるのみとなった。
現在、中共支那の海空軍の増強は質・量共にすさまじい。ステルス性能を持つ『第五世代戦闘機』も急ピッチで開発中であるし、イージス艦や空母の建造にも乗り出している。対する日本の空自は、F-Xの選定でF-35を選んだものの、まだF-35は開発途上の機体である。日本独自のステルス戦闘機の開発の為、ステルス性能実証機として、『心神』なるものをモックアップし、フランスの施設で実験中だが、所詮、まだ『模型』の域をでない。
海自も『ひゅうが級ヘリコプター搭載護衛艦』2隻を配備し、その拡大改良型のヘリコプター搭載護衛艦2隻も建造されることになったが、中共支那が建造予定の6万トンの中型空母に比べると見劣りがする。
もし、将来、『日米同盟』が『破棄』された場合、自衛隊のみで日本を防衛するのは甚だ困難と言わざるを得ない。しかも、相手は核兵器を大量に保持し、原潜の配備も進んでいる。日本は『国是』として、『原子力』を『平和利用』以外には応用しないことになっている為、核武装や原潜等の建造は無理である。
日本がチベットなどの二の舞になるのはそう遠くない未来である。
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