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今そこにある危機(22) [国際・政治情勢]

「【久保田るり子の外交ウオッチ】マニフェストの罠にはまっていないか「点検鳩山外交」

2009.9.27 08:00 産経新聞


金融サミットのオープニングレセプションでバラク・オバマ米大統領(左)と肩を並べる鳩山由紀夫首相=09年9月24日午後、米ピッツバーグ(ロイター)

 鳩山首相の国連デビューを世界はどうみたのか。温暖化防止策「25%減」表明への歓迎のウラで、「米国には鳩山政権の理念などへの警戒感が強い」との声が聞かれる。「試験はこれから」というわけだ。鳩山カラーを特徴付けたのは「核軍縮」「環境」「東アジア共同体構想」への意欲と、「友愛外交」「マニフェスト外交」だった。しかし、アンチ自民の旗印、マニフェストへのこだわりは外交の行方を自縛するのでは-との指摘もある。環境と日米関係を点検してみた。(久保田るり子)

■「患者をコロしてもらっては困る」

 米オバマ大統領も国連デビューとなった気候変動サミットだが、演説内容は対比をみせた。オバマ氏は上院で難航中の温暖化対策法案の国内議論を踏まえ、主導力発揮の意欲を強調したが、具体的な言及は行わなかった。鳩山首相は国内未調整で産業界から「25%減」への反発が強い中でマニフェストを優先した。国内への対応、配慮の差が際だった。

 しかしオバマ氏の演説は巧みで説得力を持っていた。「グリーン・ニューディール」など始動中の政策的な裏付けがあるためだ。一方の鳩山政権の政策具体化はこれから。国民が懸念する負担への説明責任、経済・産業界へのグランド・デザインの提示など政策立案が山積だ。

 ポスト京都議定書の交渉期限まで3カ月の時機である。国内だけでなく国際環境でも交渉決着の見通しがないなかでの数値発信だった。存在感を示す政治的効果は大きかったが、既成事実化への懸念が残った。

 環境外交は国際政治そのものの生存競争。各国のデータは「自分たちの都合のいい数字を各国が強調する傾向」にあり、「交渉は最も強い国に支配される」(サスカインド著「環境外交」)。「CO2削減の名のもと、他国のエネルギー政策に介入し経済牽制(けんせい)する手段ともなる」とされる。

 京都議定書は欧州主導で進み、米国は手段を選ばず「国益」を選択、離脱した。世界に占める排出量4・8%にすぎない日本は、結局6%減(90年比)の約束を背負わされ、これは「京都の外交敗北」と記憶されている。教訓はどこにいったのか-というわけだ。

 「25%減」は途上国や米国などすべての主要排出国の参加が大前提。また首相演説には「目指す」(AIM)という言葉が入っており、国際法上の25%はあくまで「努力目標」。だが、そのインパクトから「野心的」と世界の評価を受けた。環境外交の世界では「常道からは考えられない数字」(専門家)。数字の一人歩きへの懸念が強い。

 政治公約に固執して「手術は成功した。だが患者(経済)は死んだ-では困る」と専門家はいう。 

■止める、変える、見直す…日米関係の行方

 焦点の日米関係。「対等な関係」を象徴する3点セット(1)インド洋給油問題(2)米軍再編(3)地位協定改定には、首相も外相も触れなかったが、「止める(インド洋)」「変える(再編)」「見直す(地位協定)」との後ろ向きな宣言(マニフェストや首相論文)が強く発信されたあとに、首脳会談などで日米関係強化を強調しても「説得力に欠ける」との見方が強かった。

 これらの課題は10月のゲーツ国防長官来日で調整されるが、岡田外相は沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題▼日米密約▼インド洋での給油問題は「100日間の優先課題」としている。公約に加え、協議を抜きに一方的に交渉ごとの期限を設定する手法には、同盟関係への配慮が希薄との指摘が少なくない。

 専門家の関心を呼んでいるのは、岡田外相が就任以来、公言している「米国に核兵器の先制不使用宣言を求める」との考えだ。

 国際社会では国連憲章で武力行使が禁止されている。従って武力行使とは個別、集団的自衛権の発動時に限られている。「核の先制不使用」とは、先制攻撃(first attack)ではなく、核兵器使用を核兵器攻撃への反撃に限定するという意味で、反撃の場合、核兵器を先に使わないこと指している。

 たとえば北朝鮮が核攻撃を仕掛けてきたときに、被弾しないと核反撃できないことになり、米国の作戦を大きく阻害する。安全保障の専門家は「拡大抑止(核の傘)のもとで対北脅威に備えてきた日本の安保環境を根本から覆す」と妥当性を問う意見が多い。また、提案を行うにしても、事前に公言する手法については「野党色が抜けない」と疑問視されている。

 日中韓首脳会談、日米首脳会談など重要日程がめじろ押しのなか、鳩山外交はマニフェストに縛られることのない柔軟性、理念から現実へのシフトや、同盟や安保の基軸の明示を求められている。」


今回の鳩山政権の外交デビューを日本国内のマスコミは『大成功』と絶賛するが、私は『大失敗』と評価せざるを得ない。兎に角、民主党のマニフェストと鳩山首相個人の理想に基づく政策を国内外に押し付けた印象が強い。守れもしない非現実的政策を国内での賛同も得ずに高々と掲げられても国益を損するだけである。例えば『米国に核兵器の先制不使用宣言を求める』など、正気の沙汰ではない。『友愛』外交が通用するほど国際社会は甘くない。『外交』の最終手段が『戦争』である以上、『外交』とは、自国の『国益』を国際社会でいかに多く獲得するかという『戦い』である。そのことを忘れて、日本の『国益』を大きく損ねてしまった今回の日本外交は『敗北』以外の何物でもない。

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